名刺は個人情報か
名刺は、氏名や電話番号、所属組織などが記載されているため、扱われ方によって「個人情報保護法」の対象になります。では、個人情報保護法の対象になる場合とそうでない場合には、どのような違いがあるのでしょうか。
名刺が個人情報保護法の対象として扱われない場合
名刺は、生きている個人のものである限り個人情報ですが、以下のような場合は個人情報保護法の対象とはなりません。
紙情報として第三者に渡す
名刺入れを紛失する
現在の個人情報保護法の制定目的は、「個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務を定め、個人の権利や利益を守る」ことです。
つまり個人情報保護法は、「個人情報を取り扱う業者」に「個人を特定可能な情報を守る義務」を課すものです。そのため名刺を所有する個人が名刺入れをなくしたり、紙情報として第三者に手渡したりしても、この法律で保護する対象とはなりません。
ビジネスの場で名刺を交換する行為は、上述の「紙情報として第三者に手渡す場合」に該当し、この時点では個人情報保護法の対象にはなりません。しかし、名刺を会社がデータベース化したり、リスト化したりした時点で、個人情報保護法の対象になります。この点については、次項で詳しく解説します。
名刺が個人情報保護法の対象として扱われる場合
名刺が個人情報保護法の対象となるのは、以下のような場合です。
名刺を50音順にファイリングする
名刺をデータベース化して検索できるようにしている
先に述べたように、個人情報保護法は個人情報を取り扱う事業者へ向け、保有している個人情報を守る義務を課すものです。
名刺をファイリングしたり、データベース化したりした時点で、個人情報保護法でいう「個人情報データベース」を保有・管理していることになり、個人情報取扱事業者としての規制の対象になります。
この個人情報データベースとは、「容易に検索できるように、何らかの規則(50音順、年代順など)でまとめた情報」です。そのため、ただ名刺を集めただけでは個人情報データベースにはなりません。
つまり、例えば受け取った名刺を箱のなかに放り込んだままバラバラに保管している状態では個人情報保護法の対象にはなりませんが、名刺を体系的に整理して保管すればデータベースとして扱われ、個人情報保護法の対象になるわけです。
守秘義務違反に注意
では、個人情報データベースを保管する事業者でなければ、個人情報の取り扱いを徹底しなくてもよいのかというと、そんなことはありません。社員の一人が他企業の方と交換した名刺を紛失するようなことがあれば、その社員が所属する企業にとって大きなマイナスだといえるでしょう。
また、紙の名刺そのものは名刺交換した社員個人に所有権がありますが、名刺に書かれた情報を会社の承諾なしに使っていいかどうかはまた別の話です。前の会社の就業時に交換した名刺を持ち出し、転職先企業の営業に活用することは認められないケースが多く、従わなければ「守秘義務違反」となり、会社から損害賠償を求められる可能性があります。
個人レベルであったとしても、名刺管理はきちんと行う必要があるといえるでしょう。