世界の名刺事情
日本の本格的な名刺文化には、欧米の名刺文化が影響しています。
18世紀の欧州では、名刺は社交界の挨拶に不可欠なものとなり、銅版画で作った趣向を凝らした名刺が見られるようになりました。その頃から、欧州では名刺のマナーや使い方などが定められるようになっていったのです。
また、名刺が誕生した国といわれる古代中国では、7~10世紀(唐の時代)頃にすでに名刺があったことが確認されています。
世界各国の名刺文化は、日本国内の名刺文化と密接につながっており、世界の名刺文化を知ることは、日本の名刺文化の発展の歴史を知るうえでも、興味深いものです。ここでは世界各国の名刺事情と、その歴史について解説します。
名刺の歴史や文化については下記もおすすめです。
名刺とは、その役割と歴史
名刺の文化 国ごとの違いを知ろう!
イギリス
イギリスでは現在、ビジネスの場で名刺を使用することはあまりなく、会社の重役がパーティーなどで名前の書かれたカードを用いる程度です。
フランス
フランスでは、主に会社の管理職以上の地位にある人が名刺を持っています。これから長く関わりそうな相手に、連絡先を伝えるために渡すというのがフランスでの名刺の使われ方です。
ドイツ
ドイツでは16世紀頃から、「訪問先が不在だったとき、自分の来訪を知らせるため」に名刺を使っていました。しかし今は、一般的に名刺が使われることは少なく、おもに外国人を相手に仕事をするときに使われています。
ロシア
国内で名刺が使われることは少なく、ドイツと同様、相手が外国人である場合に使用しています。
アメリカ
アメリカでは、南北戦争終結後の18世紀頃から、お金持ちの間で名刺が使われるようになりました。当時のアメリカの名刺(Calling Card)は、富豪にとってのステータスの意味合いが強かったとされています。
20世紀に入ると名刺はビジネスツール(Business Card)としても使用されるようになりました。今では、名刺は名前や身分を明かすというよりも、その人自身や会社、自社製品の宣伝として使われることが多くなっています。ただし、アメリカではビジネスの場でも、日本ほど名刺を活用することはありません。
中国
名刺は、古代中国で誕生しました。漢王朝があった時代に、初代皇帝の劉邦(りゅうほう)が有力者の集まる宴会で上座につくため、資金を工面することを書いたものを渡したとされ、これが最古の名刺として語られています。
三国時代に活躍し、249年に没した朱然という人物の墓からは、竹に名前が書かれた名刺がでてきました。古代中国では竹のことを「刺」と呼んでおり、そこに名前を書いたことから「名刺」と呼ばれるようになったとされています。
7世紀~10世紀(唐の時代)には、その名前を書いた竹を玄関や戸口に挟んで、不在の相手に訪問を知らせていました。また当時の官界では、官僚に挨拶をするときや、高い地位の人への取り次ぎ用に名刺が使われていたとされています。
現在の中国では、上級の管理職や貿易マンなど、対外的なビジネスを行っている人のみが、名刺を使っています。
韓国
日本と同様、ほとんどの公務員や会社員が名刺を使用しています。